イヴ・サンローランへの長いラブレター
前の記事の「マイ・インターン」を見た後に「イヴ・サンローラン」も鑑賞。
同じ働く人に焦点を当てているから違いが見れて面白いかなーと思って。
前はグレース・モナコの映画も見て面白かったからというのもあり、有名ブランドの歴史も知れるし、なんだか美形の男性が主演じゃないの!というおばさん精神もあり。笑
マイ・インターンはあれはあれで面白かった。フィクションだからなんでもありだし。
イヴ・サンローランはノンフィクション映画ですから。ブランドがどう出来上がっていったのか、ブランドイメージすらおぼろげだからこそ興味をもった。
まずは、あらすじ。
----
サンローランは若くしてディオールのデザイナーとなり、若さゆえに耐えられなかった重圧と、祖国との戦争のために徴兵されたストレスから精神を衰弱。出所してからも自らの心の弱さと闘いつつも素晴らしいデザインを世に送り続ける。酒や煙草に溺れ、薬に手を出し、精神に異常をきたしながらも添い遂げた、恋人でありビジネスパートナーであるピエールの回想をもとにサンローランの生涯を辿る。
----
映画の始まり方は「このおじさん誰だろう?」だった。ピエールの存在を知らない私は、サンローランだと思っていた。愛しいパートナーを亡くしたサンローランが二人の愛の巣である自宅のコレクションを整理しているものとばっかり思っていた。
私の頭の中には「こんな素晴らしい人が同性愛者であるはずがない。そんなに弱い人間であるはずがない」という先入観があった。キリスト教徒における同性愛は罪であるはずだという知識も影響していたのかもしれない。(無宗教ではあるけれど、あくまで知識として)
先入観って怖い。
インターネットで調べればピエールが何者なのか分かると思うが、映画からはいかにサンローランを愛していたかが分かる。
ただ、只管に、ピエールはサンローランを愛していた。
私は同性愛者ではない。だから、同性愛者の方々の想いや辛さは想像するしかない。
同性愛者ではないからといって、差別することも迫害しようとも思わない。無宗教だからそうなのかもしれないし、現代においては受け入れられてきているからなのかもしれない。でも、かつては違った。同性愛は罪であり、受け入れられないことだった。
そんな世界のなかで、天才を守り、才能を開花させたピエールは、本当に良きパートナーであると思う。そこに性別なんて関係ない。
ただただ、自分の愛した人を守り抜きたいと、夢を叶えてあげたいと、奔走し、苦悩し、時に嫉妬し、そうやって二人の世界を築き上げた。
なんて、美しい世界なんだろうか。
なんて、美しい関係なんだろうか。
映画が進むごとにピエールに感情移入していく。
サンローランの生き様であるはずなのに、ピエールの生き様を魅せられたようだ。
ピエールの深い愛情を信頼していたからこそ、ピエールに甘え、ピエールに縋り、堕落していくサンローランを、それでも愛おしいと思った。
だって、ピエールがサンローランを、深く深く愛していたから。
そのピエール目線の映画だったから。
サンローランに向けたピエールからの長いラブレターだから。
そうでなければ、ブランドイメージは崩壊していただろうし、イヴ・サンローラン側も認めなかったのではないかと思う。
この映画は、サンローランの人生ではない。
サンローランを愛したピエールの生き様であり、人を愛することを教えてくれる映画だ。
願うことならば、このラブレターをサンローランに見て欲しかった。